たまには、病気のお話も書きます。ここのところ猫の口内炎の診療が何件か続き、残念に思った事があったの
で少々。
口内炎の猫ちゃんは、
最近痩せてきて、毛艶が悪い、よだれ、食べるときに悲鳴をあげる、食べそうなのに食べられない・・・
このような症状を訴え、来院されます。
猫の口内炎には、いくつかのタイプがありますが、比較的多くみかけるのは、「免疫過剰型」だと感じます。
このタイプの猫は、血液検査を行うと、白血球が上昇していて、炎症性蛋白(免疫グロブリン)が上昇してい
ることが特徴です。口の中の免疫機構、すなわち口に入ってくる異物を認識し、余計なものは排除しようとする
力が過剰になって炎症が起こっていると考えられています。したがって、口の中の異物・・・汚れ、細菌の数を
できるだけ減らすことが炎症を抑えるのに効果的です。抗生物質の投与、歯垢・歯石の除去、歯周病の治療、
免疫調整サプリメント投与などが初期治療で行われます。また、免疫抑制効果を持つ薬・・・ステロイド剤も効
果的なのでよく使用されます。しかし、ステロイド剤の中でも3週間~1ヶ月効果が持続する長期持続型のステ
ロイド(デポメドロール)の注射は、歯科の専門医からすると、「使用しないほうがいい」と考えられている薬で
す。この薬は、初期における消炎効果が絶大なこと、治療が簡易であることから、昔から猫の口内炎で使用さ
れてきた薬ですが、反復投与により治療効果が徐々に薄れてくること、口の中の免疫機構を最終的に破綻さ
せることが後々、大問題となります。最初は、良いけど最終的には最初の状態よりも悪くしてしまう・・・という感
じでしょうか。
このタイプの口内炎では、最終的に全抜歯が適応になることがあります。内科治療への反応が乏しい場合で
も、全抜歯をすることで約7割の猫が内科治療を必要としない状態まで回復します。長期持続型のステロイド
は、この治療成績も低下させる可能性があります・・・・・・つまり、1年近くさんざん、デポメドロールを使用した
あとで、効きが悪くなったのでそろそろ全抜歯してみよう!という治療を選択したい飼主さんもいらっしゃるかも
しれませんが、私が良くコンサルをお願いする歯科専門医は、デポメドロールを複数回使用した後の全抜歯に
対する効果が芳しくないと感じています。
そんなわけで、当院でも、「月1回の口内炎治療の注射」はおすすめしません。
猫の全抜歯の方法、全抜歯後も完治しないケースの対処方法はまたいずれ書く予定です。